綿密な世界観と「言葉」がもたらす王道のストーリー『Hollow Knight: Silksong』感想

※この記事は2025年11月12日にnoteに投稿したものと同一の内容です。
※この記事には『Hollow Knight: Silksong』のネタバレが含まれております。

前置き

こんにちは。腹話術人形Vtuberのラム=ラグドールです。普段はTwitchでスト6やインディーゲームを中心に配信活動をしております。日々の活動のなかでプレイしたゲームはsteamにレビューに残すことにしているのですが、せっかくnoteを運用しているのだからこちらにも残さない理由は無い! というわけで配信内外を問わずプレイしたゲーム(特にインディーゲーム)の感想を残していくことにしました。継続してやっていけたらうれしいです。

『Hollow Knight: Silksong』プレイ感想

世界観を難易度が補強する

『Hollow Knight: Silksong』は2025年9月4日にTeam Cherryよりリリースされたゲームです。ジャンルは前作『Hollow Knight』と同様にメトロイドヴァニアであり、主人公は同作でボスとして立ち塞がったホーネットとなっています。

今作は前作『Hollow Knight』と世界観を同一にしながら、システム面及びストーリー面について様々な相違点がありました。例えば前作のマップが下へ下へと降りていく構造だったのに対し、今作はシタデルへの「巡礼」の道をなぞり上へ上へと登攀していく構造になっています。またクレストによる可変的な戦闘スタイルや道具(前作でいうチャーム)が種類ごとに分けられているなどホーネットの戦士としての側面を強調したシステムは、前作とは異なるゲーム体験をもたらしながら世界観をより深く描写するものとなりました。

今作で特に印象に残ったのは「捕食者の狩場」及び「胆液の沼」における罠のベンチです。多くのプレイヤーがあの罠の餌食となり、底知れぬ怒りを抱いたことでしょう。もちろん、私もそのうちの一人です。

リリース直後に本作を批判する声の多くは「捕食者の狩場」の難易度に関するものでした。また、真ENDに行くためには攻略が必須である「胆液の沼」の難易度の高さについてもたびたびネガティブな文脈で言及されているように感じております。

ただ、私自身はこの2つのマップについて肯定的な評価をしております。それは、巡礼者を捕食する狩場とシタデルに反抗するグロウルの一団という設定をこの難易度が補強したためです。

例えば他のゲームをプレイする際、「なぜボスの前にわざわざ全回復ゾーンがあるのだろう」と感じたことはないでしょうか。私たちはそれらを「ゲーム体験を快適にするもの」として(世界観に干渉しないメタ的な存在として)受け入れてきたと思います。

しかし、今作はセーブポイント1つをとっても世界観に忠実な理由付けがあります。都合よくボス前に置かれるのではなく、あくまで「巡礼者の休憩所」としてふさわしい場所にベンチが置かれ、それが世界観を崩すことはありません。逆にセーブポイントの存在と世界観を完全に切り離すことに慣れたプレイヤーからは「ベンチからボスまでが遠い」という批判が続出しました。それももちろんゲーム体験の快適さという点で真っ当な批判ではありますが、その上で世界観に忠実に設計することを優先した制作者の意志を汲みたいと私は考えております。これを踏まえると、今作で設定された罠のベンチは世界観に非常に忠実なものと言えるでしょう。

偉大なるグロウルがソウルを使った技を繰り出したり、カラクリの舞踏者のモデルが第3章で判明したりなど、ボスの技やコンセプトなど1つ1つが本作では綿密に考えられています。その上で敢えて多くを語らない『Hollow Knight』というシリーズの性質は今作でも活きており、まさに正当な続編であると感じました。

ノンバーバルからバーバルへ

ちょうど本作をプレイ中、AUTOMATONから興味深い記事が出ました。

この記事ではテキストのないゲームーーノンバーバルゲームに着目し、その要素が「能動的な想像力」「矮小な存在への憐憫」「フラットな感情移入」を生むと書かれています。私がこの記事を読んだときに真っ先に浮かんだのは『Hollow Knight』そして今作『Hollow Knight: Silksong』でした。

両作はノンバーバルゲームというわけではなく、テキストは存在するしお喋りするキャラクターも多数登場します。ただし、前作である『Hollow Knight』の主人公(以下放浪者)は一切の言葉を発しません。それゆえに発生したNPCとのディスコミュニケーションや悲劇的な結末に対し、プレイヤーはより深く心を動かされることになります。特に前作の収集要素であった芋虫の結末やゴートの存在など、かわいらしいデザインの世界で起きる様々な不条理に心を痛めたプレイヤーは多いでしょう。そして、それらの悲劇をフラットに描けたのは間違いなく放浪者が一切の声を出さないキャラクターだったからと言えます。言わば、『Hollow Knight』はバーバルとノンバーバルの間に存在するゲームでした(同じ性質のゲームとしてソウルシリーズなどが挙げられると思います)。

一方で、続編である今作はホーネットがNPCと会話するバーバルゲームです。これにより前作で起きていたようなディスコミュニケーションは解消され、様々なNPCと交流して絆を育む姿が描かれました。ベルハートの住民との交流やシャクラとの間に生まれた絆、そして第3章でのガーモンドのクエストなどの王道の展開は、今作がバーバルゲームだからこそ成立したと言えるでしょう。

今作では主人公であるホーネットがNPCと会話する

一方で、ホーネットのドライな性格によって本作は王道になりすぎず前作の雰囲気を引き継いだとも言えます。ホーネットは他のキャラに過剰に感情移入することはありません。プレイしていくうちに使命感や人情味を感じることはありますが、基本的には冷徹でリアリスティックなキャラクターとして描かれています。強い感情を表現することがほとんどないゆえにプレイヤーはホーネットの内心を想像し、それがこのゲームへの感情移入に繋がったのだと私は感じました。

総評

今作『Hollow Knight: Silksong』は、前作『Hollow Knight』からシステムやストーリーを大きく転換しながらも、綿密に設計された世界観を重視するゲームデザインにより正当な続編として成立しました。特に、前作から続くある種の諦観に似た"暗さ"が通底する世界で、シェルマのようなキャラクターが未来への希望として着地した点は象徴的だと思います。

一方でここまで対称的な続編を作った以上は、もう『Hollow Knight』シリーズで続編は出ないのではないかという懸念もあります。もちろんTeam Cherryが全くの新作を出すならそれも本作と同様に期待しますし、その前に今作でもDLCでボスラッシュや高難易度ボスなどが出るのではないかとワクワクしておりますが。

以上で『Hollow Knight: Silksong』の感想を締めさせていただきます。ここまでお付き合いいただきありがとうございました。


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