理想論は理想論で終わらない。『1998: The Toll Keeper Story』レビュー
※この記事は『1998: The Toll Keeper Story』のネタバレを含みます。

『1998: The Toll Keeper Story』をプレイしました。昨年に発売したゲームでしたがそのときは存在を知らず、PS5に移植するという記事を見かけたことで知ったゲームです。崩壊国家のなかで妊婦が厳しい選択をする『Papers, Please』ライクのゲームということで、現在の日本の状況なども鑑みてある種のデモ活動のような気持でプレイさせていただきました。
重く苦しい世界と、それでも人間の力を感じさせる希望あるストーリーに勇気づけられました。それではレビューを書いていきます。
タイトル:1998: The Toll Keeper Story
ジャンル:シミュレーション
リリース日:2025年10月28日
開発元:GameChanger Studio
パブリッシャー:GameChanger Studio, CC_Games, Beep Japan Inc.
(ストアページより)
良かった点
ストーリーにマッチした難易度上昇
日々が過ぎるごとに検査項目などが増えていくのですが、これがなかなかちょうどいい難易度。私は集中力が散漫なので何度かミスをしてしまいましたが、単純作業が得意な方はきっとスラスラと捌いていくのではないかと思います。特にナンバープレート関連はついつい忘れてしまう。また、検査が完璧でも実際に車を通すか通さないかはプレイヤーの良心や信条に則るシステムも非常に良かったです。おかげでゲームに没入感が生まれ、デウィの葛藤を追体験しながらゲームを進めることになりました。

抵抗と生存を天秤にかけるシビアなストーリー
国家権力に従っていたらお金は稼げるが友情や人権を失ってしまう。情を優先して反権力活動に協力しすぎるとお金が稼げず生活が成り立たない。特にデウィが妊婦であるため、「子どもを健康に産みたい」という彼女の望みと「国を変えたい」という人々の望みのどちらを優先するかという選択を常に迫られることになります。極限状況でそのような不条理な選択を迫られてしまうという点で、決して現実の国家をこのようにしてはならないと感じました。
自分を見つめなおすナラティブパート
『1998: The Toll Keeper Story』には1日の終わりにデウィが日記を書き、それに続ける形でプレイヤーも言葉を綴るというパートがあります。もちろん何も書かなくても進められるのですが、私は配信上でプレイしていたのもあり自身の社会に対する気持ちを綴りました。人種差別や貧困、国民に目を向けない政治などに抱いている気持ちを言葉にしたのは自らをケアすることにも繋がったと思います。このゲームをプレイする方には、ぜひナラティブパートで同じように気持ちを言葉にしてほしいです。

総評
正直、気になる点はありませんでした。それくらいコンパクトに、しかし濃密に完成された作品だと思います。
政府が「資源は足りている」と噓をついたり「この局面を乗り越えるために一丸となって~」といったスローガンを出したりなど、現在の日本との共通点が非常に多い世界だと感じました。そのためかなり精神的に消耗する内容でしたが、それでも隣人愛や人権意識を強く持つことがしっかりと結果に結びつくという点で、希望のあるゲームだと言えるでしょう。
理想論は決して理想論ではない。今、世界情勢や日々の生活に不安を抱えている人にこそプレイしてほしいゲームです。







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