血よりも濃くてまっしろなもの~『氷血』レビュー
※本記事は映画『氷血』のネタバレを含みます
『氷血』観てきました。モキュメンタリーとか奇妙なものとかはいろいろ通ってきたけどなんだかんだドストレートなJホラー(『リング』とか『呪怨』とか)は観ていなかったので、雪女を題材にした本作はめちゃくちゃ楽しみにしていました。Twitterでは「今年ナンバーワン」と評価する人も散見されましたが、僕自身も今年観たなかでかなり上位に入る作品だと思います。ものすごく良かったので多くの方に観てほしい……
あらすじ
幼い息子・晶を連れて、豪雪地帯にある夫の実家に移住した稔(北山宏光)と悠希(加藤千尋)。
穏やかな日常を願った二人だったが、認知症の父・茂(佐野史郎)は、なぜか悠希にだけ激しく怯え、
亡き妻の名を叫ぶ。
ある朝、茂は異常な姿で怪死する――
その瞬間を境に、家族は疑念と恐怖に苛まれ、やがて、家の中には不気味な“白い女”が次々と現れ、
日常を侵していく―
稔は気が触れたかのように、“白い女”の絵を描き続け、幼い晶の目には母の姿が次第に“別の何か”へと映りはじめ、家族は一人、また一人と壊れていく――。
雪の結晶に魅入られ、理性を失った稔、侵蝕される悠希、そして危険にさらされる晶。
これは、呪いか、幻想か、それとも現実なのか。
雪原が鮮血に染まるとき、未知の“白い恐怖”が姿を現し、残虐に暴走するー
公式サイトより(https://hyoketsu-movie.jp/)
感想
ジャンプスケアが多めな映画を映画館で観るのははじめてだったため、叫び声を我慢するあまり首を攣りました。そんなこともありつつ、昔話の「雪女」を現代フェミニズム&シスターフッドの要素を加えて換骨奪胎した本作は怖さも物語も一級品でした。
”白い女”も認知症の茂も同じように恐ろしく見える昌視点のパート。茂の介護や稔からのモラハラ、昌からの拒絶によって精神をすり減らす悠希のパート。そして、ヒトコワへと移りながら”白い女”の正体がわかる最終パート。怪異の恐怖と人間の恐怖、幻覚と現実が混ざり合うなかでそれでも一つの想いを貫き通した悠希の在り方と、昌の「お母さん」という台詞に思わず涙がこぼれました。
引っ越してきた際に近所のお爺さんに言われた「血は水よりも濃い」という台詞も自然ながら、血のつながりの無い子への愛が困難を打ち砕くという結末への伏線として機能しています。匂わせ程度にすぎませんが同性愛が出てきたのも個人的にとてもうれしいポイントでした。「血」や「家」といった保守的な概念の被害者であった女子どもが、同性愛や血のつながらない子どもへの愛によってそれを打破するという構造が素晴らしい。昔話で恐ろしい存在として描かれた雪女を「約束を破られて家から出ていかざるを得なかった女」と再解釈した点も非常に面白かったです。現代を生きる者として、彼女らの痛みを決して忘れてはならないと思いました。
そしてなにより、稔役の北山宏光さんの優しいのに怖いモラハラ演技、悠希役の加藤千尋(セントチヒロ・チッチ)さんの雪原に映える不気味で美しい見せ方や極限状態の演技が素晴らしかったです。佐野史郎さん演じる茂が悠希に抱きついたシーンも本当に気持ちが悪かった(褒めています)。
古典的なホラーでもあり、現代的なフェミニズムでもありシスターフッドでもありクィアでもある映画『氷血』。とにかく素晴らしかったのでぜひご覧ください。







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